自然の曲線に惹かれて

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初めて足を運んだ三井記念美術館。
近代的なビルのエントランスを抜けて、階数の文字盤の上を針が動いていく
レトロなエレベーターの前に立った時から既にちょっといつもの日常と違う匂いが
漂った気がしたけれど、はじめの展示室に足を踏み入れて、それはさらに強まった。

ルパン三世が狙いそうだな、と思ってしまう(笑)くらい端正で、
良い意味での伝統的な「古さ」を強く肌身に感じさせる薄暗い室内の空気。
(後から調べたところ、この展示室や旧式エレベーターは1929年に竣工されたものらしい!)
静かな展示室の方は自ら何も主張していないのに、こちらの方が圧倒されてキョロキョロしてしまう。
と同時に、だからこそ、その場に展示されていた装飾磁器の数々が、
どれもそれにふさわしい魅力を持ち、「選ばれたもの」なのだということをより味わうこととなった。

正直、当時の名窯や陶磁器そのものに関する予備知識はあまり無かったけれど、
まず目についたのは動物、虫、植物など自然をモティーフにした磁器の多さと、リアルさ。
工業的なデザインではなくて、自然の美しさに回帰、フィーチャーしているのが
アール・ヌーヴォーの1つの特色なのだろうけど、改めて見てみると、
花びら一つ、虫の羽の筋一つ、本当に丁寧な曲線の微妙な重なり。
葉っぱのゆらめきも、つららの鋭さも、女性の肉体のうねりも、
じっくり見ていて飽きの来ない微妙さがある。

「まっすぐな直線」「みんな同じ」が美しいという価値観は現代も世の中に溢れかえっていて、
「なんか曲がってる」「一つだけ違う」は、工場のラインから「不良品」として排除される。
でもそんな風に神経質なほど徹底してるのって人間だけな気がするし、
そういう均等性が守られた商品に私自身、安心感がある一方で、
それは人間の内面(場合によってはエゴ)から生まれてきた
独特に不自然な美意識なのかなぁと立ち返った。
(突き詰めると"クローン"という言葉が浮かんでしまう)

19世紀末から20世紀初頭の人たちも、
東洋、西欧の間でお互いに最新の文化、工業や文化の風潮に影響を受けつつ、
共通して心のどこかで「自然の躍動感」みたいなものを欲していたのかもしれない。
花瓶やコーヒーサーヴィス、
ユニカと呼ばれる芸術作品として認められた絵皿に再現された動植物の仕草、
表情豊かな魚をかたどったフィギュリン(人形のような彫像)などを見て、
ロイヤル・コペンハーゲンなど、多くの名窯が今も愛されている理由がわかる気がした。

そして技術的な部分でもっとも印象に残ったのは「釉下彩(ゆうかさい)」という技術。
若干グレイがかった淡い青、ピンクなどの発色が印象的なのだけど、
当時は最新技術で、国内でも研究が行われていたそう。

落ち着くけれど、華やかで、どことなく普遍的に惹かれる色合いも、
当時は想像を絶する努力と試行錯誤の末に、生み出されていたものらしい。
そういえば、この日の帰り道に見た夕方の空が正に目に焼き付けてきた
「釉下彩(ゆうかさい)」的な色合いそのもので。

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造形だけでなくて、色合いの面でもやっぱり自然の機微に魅せられていったんだろうなぁ、
と感じずにはいられなかった。

ふたたび情緒をそそるエレベーターに乗って降りてきたら、
もうそこはただぼんやり暑いだけの日常でしかなかったけれど、
家に帰って、ふとスーパーの総菜を割り箸で食べてかけた手が止まった。
美味しくないわけじゃない。むしろありがたい。
でも、量産された四角いパックから連日食事をとっていたことに少しだけ危機感を覚える。
高級な食器は買えないけれど、
いつも同じ簡便さ=綺麗、良い、正しいとは限らないという当たり前のことを肝に銘じた。

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☆今回足を運んだ展示会
  「特別展 アール・ヌーヴォーの装飾磁器 ヨーロッパ名窯 美麗革命!」@三井記念美術館

☆こちらの展覧会の会場では、500円にて今回私のネットラジオにゲスト出演いただいた
  株式会社アコースティガイド・ジャパン制作の音声ガイドを利用することができます。
  恒松あゆみさんのナレーションで、技術的な部分から見逃してしまいそうな小さな見どころまで、
  色々な発見に誘ってくれる上、当時のクラシックをBGMとして聴くことができるのでおすすめです☆
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プロフィール

菊池ともか

Author:菊池ともか
Twitter:tomoka_slvjet
夢見がちギタリスト&歌うたい。
1988年2月3日生まれ。AB型。
東京都出身。
10代半ばからギターに夢中で
様々なバンドにギタリストとして参加。
現在はソロプロジェクト
"Folk Rock Express"進行中。
愛用ギターは銀ラメのグレッチ・シルバージェット!
アコギはマーチンの000-15M☆

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