超絶とは

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ちょっと前のことになりますが、この映画を見に行ってきました。
19世紀の天才ヴァイオリニスト、パガニーニの映画
なんか久々に、「劇場で見て良かった」と心底思える素晴らしい音楽映画でした。

元々、悪魔に魂を売っているのでは?と噂されたほどの演奏で評判だったという
パガニーニのことはなんとなく興味があって、
あるライブの帰り道、ふと思い出したように電車の中で彼の人生について調べたら、
「もうすぐ映画公開…!?」と。
そんな、ピンときた予感に誘われて、劇場にいきました。

私はヴァイオリンは弾けないけれど、その音色は大好き。
神様や天使にもし声があるとしたら、きっとヴァイオリンみたいな声色なんだろうな、と
冗談じゃなく思っているのです。

でも、パガニーニの人生や演奏に常につきまとっているものは
「超絶技巧」という言葉。これがどうもシックリこない。
映画を見て、さらにその思いが募りました。
演奏家を「超絶」たらしめるもの。それは果たして「技巧」なのか?

そんなことを考えましたが、具体的に書きすぎるとネタバレになりそうなので
下に隠しておきます。興味のある方はどうぞ。
まず、この映画が何より素晴らしいのは、俳優ではなく、ヴァイオリニストが
ヴァイオリニストを演じ、音楽を奏で、製作の指揮を取っているところである。

パガニーニ役のデイヴィッド・ギャレットの鬼気迫る演奏、そして端麗な容姿。
演奏家としての範疇を超え、ステージを降りた天才の堕落した様子や、儚いロマンスまで演じる。
音楽のみならず、表情、仕草、眼差しまでを演じることは、余程突き抜けた
尊敬と愛情、思い入れがあってこそのことだろうが、その愛に呼応するように、
華やかなストラディヴァリウスの泣きの音色の中にパガニーニその人の魂が
美しく、ときに怪しく蘇る。

パガニーニの人生を忠実に追って再現した映画というよりも、
21世紀のパガニーニと呼ばれるデイヴィッド・ギャレットが、たった一つの楽器を通して
「パガニーニ」という世界をスクリーンに果敢に焼き付けようとしている
挑戦映画、といったような印象を受けた。

だから、伝記的でありながら、どこか垢抜けて古びない。
悲しい物語でありながら、どこか楽しげで誇らしい。
頽廃の極みを描きながら、どこか華麗で清らかである。

その奇妙さは、まさに天才でありながら、客の気を引くために動物の鳴き声を
ヴァイオリンで真似る姿そのものなのである。

信じがたい早弾き、誰も聞いたことがないような音楽、弦が1本になっても
奏で続ける技術。パガニーニは、未だに「超絶技巧」と謳われる。
しかし、音楽家を「超絶」たらしめるのは、本当に技巧なのか?

いくら指が動いても、聴衆の心が動かなければ意味がない。
そして、聴衆の心が動くのは、優れた技巧によってではなく、
次々に奏でられる怒涛の旋律と、
パガニーニの圧倒的な存在感の背後に悪魔の面影を垣間見たときではないのか。

不安定で堕落した生活と崩れ落ちそうな情緒の中でこそ、パガニーニの演奏は
狂気と紙一重の細いエッジの上を渡っていくようなスリルがあって、熱が篭っている。
そのスレスレの熱さが伝播していくことで、聴衆をもまた熱狂させたのだろう。

「超絶」だったのは彼の演奏技術ではなく、彼そのものであるような気がした。
陶酔はあっても、幸福はない。
情熱はあっても、平穏はない。
天使との恋を夢見ながら、悪魔と契約を交わした。

現代のロックスターにも影響を与えているのは、決して「早弾き」の名手ということによって
だけではなく、その孤独な生き様によってでもあるだろうと思う。
だが、それらを全部踏まえても、ヴァイオリンを構えてどうだ、とでもいいたげな顔に惹かれ、
息つく間もないように流れていく甘い音の嵐に、心切なくなると知りながら溺れていきたくなる。

ヴァイオリンに恋しているのか、それとも彼に、いや悪魔に…?
時代を飛び越えて夢中になれる、まさに「超絶」な音楽映画である。
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プロフィール

菊池ともか

Author:菊池ともか
Twitter:tomoka_slvjet
夢見がちギタリスト&歌うたい。
1988年2月3日生まれ。AB型。
東京都出身。
10代半ばからギターに夢中で
様々なバンドにギタリストとして参加。
現在はソロプロジェクト
"Folk Rock Express"進行中。
愛用ギターは銀ラメのグレッチ・シルバージェット!
アコギはマーチンの000-15M☆

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