バルタンの目つき



ギターという楽器はことごとく奥が深いと思う。
バンドのスタジオリハと、自宅での練習も含めれば多分、
今日1日だけで7時間ほどギターを抱えていた気がする……!
我ながら、弾きまくりの一日だった。

でも、それでも思うように弾けない場合もある。
逆に、全然練習してなくても上手くいくときもある。

ただ、長い時間弾けば良いってものでもないしさあ。
間違えないで弾けば良いってものでもないしさあ。

「ギタリスト」っていうのは多分総合芸術だと思う。
だって、ジミーペイジの何が格好いいかって言ったら、「全て」だもの。
まあ、それは、ギターというパートに限らず、全てのバンドマンに共通してるのかもだけど。

演奏技術も、生きざまも、ビジュアルも、ステージでの立ち振る舞いも、
「全て」がしかるべき形で体現されているからこその、格好良さだ。
別に、ペイジのルックスだけに憧れたわけでもなく、
かと言ってギターの演奏技術や曲だけを求めているわけでもない。
「全て」が良いのだ。

……そうなってくると、ギターを弾くのはより奥が深い分、
なおさらに謎の追求ということになるのである。だから、終わりがない。

★本日の素敵
 シルヴィ・バルタン 「アイドルを探せ」
━━可愛いのひとことにつきる。ヤバい。
  このアンニュイな目つきに、「全て」がある。

強者の美学

不道徳教育講座 (角川文庫)不道徳教育講座 (角川文庫)
(1967/11)
三島 由紀夫

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審美眼が欲しい、といつも思う。
けれど、誰かに「審美眼って、何それ?どこで手に入るの?」
と聞かれたら、これは非常に微妙な問題で答えにつまってしまう。

紋切型に言えば、
「何が美しく、また何が醜いのかを、優れた感受性で見分ける力」といったところだろうが、
「美しい」なんて言葉や概念自体の存在が既に危う過ぎて、
それを見分けるなんていうことはもう、本当は雲を掴むような話じゃないのかと思う。

存在が危ういものを、さもあるかのように探して見つめて、その上感じる。
その感じていることを完全に表現(アウトプット)することは難しく、
通常はただの「心酔」や「憧憬」に終わることが多いのだが、
ああ、この人は物凄くハイセンスな審美眼の持ち主だったんだろうなあ、と
常々思うのはやっぱり三島由紀夫である。

最近、三島氏の『不道徳教育講座』を読んでいて、また新たにそう、思った。
武士道から芝居から夜の街での出来事から神話や哲学に至るまでの
教養の広さと深さ、今読んでも全く古びない綿密で華麗な文体、
隙のない言葉の節々に感じる、芯の通った強い価値観と意志。

「不道徳教育」だけあって、題目たるや悪徳三昧なのだが(笑)、
中でも「弱い者をいじめるべし」という項目は面白かった。
氏曰く、太宰治のようにウジウジと自分の弱さを丸出しに売り出して同情を引き、
強い者まで悪者に仕立てあげる価値観は自然に反するので、
徹底的に馬鹿にして笑ってやれと言うのである。

これを読んでいて、ふとニーチェのキリスト教批判精神と似ていると思った。
「本来は強く、美しいことこそ神に愛されている証のはずなのに、
 キリスト教は神が一番愛しているのは弱い者だなどと都合よく価値を歪曲した」
といったような旨の批判である。

ところが、同じように「強者の味方」のようでも
「神は死んだ」などと、どこか陰性のニュアンスが強いニーチェの思想と違って
三島由紀夫の教訓がユニークで優しさすら感じるのは、
ここでいう「弱い者」を弱さをさらけ出して同情を引こうとする人間と
精神面に限って定義したところにある。

弱みのない人間は一人もいないが、
その弱さを自分自身で受け止めることができるのが本当の強さ。
周囲に弱みをまき散らすのは恥ずべき行為であるし、
そういう人が友人にいたら、同情して自惚れを刺激するよりも
徹底的に馬鹿にしてやった方が互いのためだと。

確かに、自分の弱さを露呈して、それに自惚れる動物なんて人間だけだよ。
美しく泳ぐ白鳥だって、水中では必死に足掻いているし、
ケガをしている獣も、最後まで自分のケガを隠し通して無理をしてでも動き回る。
弱っているのがバレたら、天敵に狙われてしまうから。
自分の弱さをしっかり把握しているからこそ、強く生き抜けるのだ。

そう考えていると、自分の弱さを拒絶するのも恥ずかしくなり、
最後にはだんだん励まされているような気にすらなってきて、
あれっ、ということは、これってこの上ない「道徳教育講座」じゃん、
「弱音をはかないで頑張りましょう」だのと棒読みで言われるより、
よっぽど道徳的に説得力があるよなあ、と
思ってしまった時、三島氏の逆説的な仕掛けというか、
文学的才能と人間的魅力にハっとする。

完全な「強さ」なんてこの世に存在するのか危ういが、
強くなるには、まず自分の弱さを受け入れるところから。
そういうものを受け入れた人間が、本当の意味で強く、美しい。
「弱い者いじめ」を武士道にも通じる「強者の美学」と
(あくまで個人的にですが)解釈し、
正にこれが「審美」の本質だと、三島由紀夫の「眼」を通して
考えた次第であります。

★本日の素敵
 三島由紀夫 『不道徳教育講座』
━━「理解されようとするのは弱さです(本文P.15/L18引用)」
   では、誰かを理解しようとするのは「強さ」でしょうか?
   それとも、それも「お節介」という名の悪徳の一つですか、先生?

シクスト先生

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ある先輩に貸して頂いてブールジェというフランス人作家の
『弟子』という小説を読んだ。1889年に書かれた小説。
(※写真は、外で遭遇したカワイ子ちゃんです。関係ないです。)

上下巻なんだけど、やっぱり読み終わるまで2~3カ月かかってしまった。
1800年代の末期の小説だけあって(訳されたのは1950年位)、旧字体だからね。
でも、ずっと惹きつけ続けられていた気がする。
ここしばらく、朝も、そして夜も、電車の中でこの本を読んでいた。

これは本当に、小説の醍醐味を凝縮したような小説……!
これ、映像化は絶対に無理。活字と、小説の勝利を確信した作品だった(笑)。
文字による表現の凄まじさを、身を以て感じました。
3Dなんか無くたって、ペンと紙だけで、こんなに凄いことができる。感服です。

ちょっと、感想を書き始めると朝になりそう……いや確実になるので(笑)
長ーい渾身の評論および感想は、貸して下さった方だけに個人的に送ろうと思います。

経験や化学だけを信じて、心も心理学で分析する実証主義と、
愛や唯一の神様など、目には見えないものを信じて祈りを捧げるキリスト教信仰。

同じ「信じる」でも、性質がまったく違うのだけど、
皆さんはどちらを信じますか?信じたいですか?

この小説の作者は、後者だったみたいですが……。

例えば恋愛なんて、目には見えないもので成り立ってるとしか思えないけれど、
「女にモテる方法」だの「男を落とす方法」だのを、
心理学(心理ゲーム)の方面から攻めていくやり方って、
テレビとかでもやってたり、現代でもありますよね。

実践的な攻略本に頼りますか?それとも縁むすびのお守り?
極端というか、飛躍した例になっちゃったけど、どちらを選ぶかによって、
この小説を読んだときの感じ方が、変わるんだろうなあ。

★本日の素敵
 アルフィー 『トラベリング・バンド』
━━いくつになっても、ハラハラドキドキ。
  この曲を聴くたびに、来世では男のギタリストになってみたいと思う。
  あっ、できれば美男子に生まれてくることを希望(笑)。
  女の子たちにキャアキャア言われながら、ギター抱えて街から街へと……
  時間を止める合言葉は、もちろんロックンロール!

追いかける運命

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お気に入りのバッグ。カタログの付録なのに、やたらあちこちで好評です
モッズっぽいでしょ。「どこで売ってたの?」とよく聞かれる。

そして中古CD屋で見つけたユーライアヒープの『対自核』(71年)。
邦題がいいね!原題は『Look at Yourself』だけど、
それを「対自核」と訳してるのが良いと思う。買う気になる(笑)。
これが「自分を見つめろ」とか「自分探し」とかだったら買わないもん。絶対に。

ジャケットも不気味で格好いいのです。
真ん中がグレイで鏡のようになっていて、うっすらと自分の影が映るという。

このアルバム、私は好き(笑)。
ハード路線でも、プログレ色が強めで良い。
「アーッ」ていうハイトーンボイス&コーラスと、仰々しいギター!
ディープパープルより、カッコいいかもしれない。

特に、「July Morning」っていう曲の後半~終盤部にかけて、
何度も何度も繰り返されるとても陰鬱な、湿度の高いギターフレーズ!
最初は格式高いクラシカルな雰囲気に始まって、徐々に崩して、
最終的にむせび泣くようなソロへと乱れ壊れていく発狂感が堪らない。

結構、どの曲も面白い。コピーしたいとは思わないけれども(笑)。

あー、もっと欲しいCDいっぱいあるのに。
毎日夕飯がキャベツだけになったとしても、欲しいと思ってしまう。

でも、某六占星術によると、火星人(+)の私は今年は「財成」の年で、
やることなすこと全てお金につながる金運が最強な年らしいですから

……そんなのあるのかって、思うけど、
この前見せてもらった「火星人の性格」(笑)は結構当たってたよ。

「人や組織と打ち解けるの非常に時間がかかり、
 何考えてるかわからないと思われることも多いけど、
 一度心を許したら、尽くすし絶対裏切りません」みたいな性格で……

あとね、向いてる職業がね、芸術関係とか、ミュージシャンて書いてあったんだった!

これはねー……自分で言うのもどうかと思うけど、当たってると思います(爆)。うん。
だからきっと、「財成」の年になるでしょう、と信じてる。都合良すぎ(笑)。

★本日の素敵
 ザ・モップス 「ベラよ急げ」
━━ワルツのリズムに始まり、うなり出すファズギター。
  でも何よりツボなのは、
  間奏の妖しげなコーラスの後ろで鳴ってるギターのフレーズとその後のソロ。
  ピンポイントに、そこだけをコピーしたい(笑)。

2011とこれから

creamy.jpg

遅ればせながら、あけましておめでとうございます
2011年とか……もうそんなかぁと悲しくも嬉しくも感じた正月でした。

今年も、心の底を子供のような夢でいっぱいに満たした大人でありたい、
そう感じておりますので、どうか宜しくお願い致します。

画像は最近気に入っているクリィミーマミのポーチ
i-podケースとして使っているのです。
ルミナスターをかたどったリボンやら☆やらが大きくて、
実用性の面で考えると……な感じですが、
私の脳に「実用性」などという文字は無い。「シンプル」という文字も無い。

派手で、美しくて、デコレーションがこれでもかとされていて、
でも、ごちゃごちゃしていて下品なわけじゃない。下卑ていない。
そういうクラシカルな感じが好きだし、そういう人に憧れるし。

ので、実用性なんて関係なし。派手至上主義。装飾唯美主義。

なんか話が脱線しましたが、
今年は、今まで以上にギターを弾き倒す年にしたいです。
ライブも沢山やりたいし、まだ出逢ったことのない、沢山の人や音楽に出逢いたいですね!

カッコつけたりせずに、好きなものに正直に生きてゆきます
今年……昭和86年は、どんな年になるでしょね(笑)。

★本日の素敵
 ダニエル・ビダル 「天使のらくがき」
━━良く聞くと歌詞が意味深。
  あなたの心に、消えないらくがきするなんて……ひょっとして小悪魔なんじゃ?


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プロフィール

菊池ともか

Author:菊池ともか
Twitter:tomoka_slvjet
ギタリスト&歌うたい。
1988年2月3日生まれ。AB型。
東京都出身。
10代半ばから様々なバンドにギタリストとして参加。
現在はソロプロジェクト
"Folk Rock Express"進行中。
愛用ギターは銀ラメのグレッチ・シルバージェット!
アコギはマーチンの000-15M☆

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